雪崩講習会

冬山で一番怖いのは雪崩です。雪崩のリスクをできるだけ小さくするためには気象、地形、積雪状況など様々な条件を加味して判断を下す必要があります。そのための講習会を、山スキーを行う会員を中心に、閉鎖されたスキー場跡地で行いました。人の命を救うことができるかどうかがかかっているトレーニングなのでみな真剣そのものです。

日 程:2025年2月1日
参加者:会員4名

スキー場跡地に着きました。ピットを掘るために少し傾斜のある斜面まで登ります。今週は雪の日が続いたためスキーを履いていないと膝上まで潜るほど積雪があります。
斜度も出てきました。積雪深をゾンデで調べたら2m以上ありました。これだけ深ければ積雪の特徴を観察するには十分です。
いいピットが掘れました。スノーソーの長さが80cmぐらいありますから、深さは1.5mぐらいです。ひとめ見ただけで、中間付近に2層のザラメ雪の層があることがわかりました。
ピットの側面で雪の状態を詳しく観察します。雪の粒子をルーペで観察しその種類を記載しました。一方、雪の硬さは指などで押して測定します。1Fは1本の指が入るone finger、4Fはfour fingers、Pはpencilの略でよく使われる略号です。
次は30cmの角柱を切り出し、スコップを被せて叩いて弱面がないかを探るコンプレッションテストです。
手首、肘を支点に叩いても破断する面はありませんでした。肩を支点に全力で叩いたところ、数回で上から20cmぐらいの深度で破断し、さらに叩き続けると上のザラメ雪の上面で破断しました。これなら今日の雪は安全です。
 
次はビーコントレーニングです。予備のビーコンをセンドモードにして埋めておき、それをサーチします。信号をキャッチするまではジグザグに走ります。雪が深いので、スキーを脱いで走るのは疲れますが、人の命がかかっている場面なのでみな必死です。
信号をキャッチしたらビーコンを膝の高さで持ち、矢印に従って進みます。これをコース(粗い)サーチと言います。
電波を追ってサーチするとこの奥のトレースのような楕円を描きます。これは、ビーコンの電波が楕円を描くように発信されるからです。
 
探査しているビーコンとの距離が数mになったらファイン(細かい)サーチに入ります。ビーコンの高さは雪面まで下ろし、距離が最も小さくなる場所を、十字を描きながら探します。ビーコンからの電波は1秒に1回しか発信されませんから、このサーチはゆっくり行います。
距離が一番近い場所をマークし、そこを中心にゾンデで探りを入れます。埋没深度はわかっているのでゾンデをそれ以上差し込みます。ヒットしなければ、そこを中心にだんだん外へ探査域を広げていきます。ヒットしたらそこにゾンデを立て、埋没深度に応じて掘り出しの形と広さを決め、作業を行います。
ビーコントレーニングの後、スキー場跡地をハイクアップして斜面や尾根、谷地形を見ながら、どんなところで雪崩は発生するのかを確認しました。
登る途中にはハンドテストを行いました。手で雪を掘り、直径30-40cm、高さ50cm程度の円柱を作ります。これを抱えて手前に引っ張り、剪断の様子を観察することにより弱面の有無や接着強度を調べます。コンプレッションテストと同じく、深度20cmぐらいのところで破断しました。しかし、かなり強く引っ張らなければ破断せず、雪崩の可能性は小さいと判断できました。
 
標高差数百m登ったところで引き返すことに。急斜面を探してスキーカットテストを行い、安全性を確かめました。
最後はゲレンデの快適な斜面の滑降です。ここではリスクマネージメントの考えを取り入れ、1人目が安全なところまで滑り込んだら次の人に合図し2人目が滑るようにして、雪崩が発生した際に巻き込まれる人数を最小限に抑える戦略を学びました。
白山山塊南部の山々をバックに、快晴の中、充実したトレーニングにやや疲れ気味の今日の参加メンバーです。
 

おわり🎶